歯学部学生の基礎知識 歯科医師臨床研修とは?仕組みや希望研修先の選び方のコツを紹介
歯科医師臨床研修は、平成18年4月1日から必修化され、診療に従事しようとするすべての歯科医師に義務付けられました。
診療に従事しようとする歯科医師は、一年以上、歯科医業を行う大学の附属病院、 又は厚生労働大臣の指定を受けた病院または診療所にて、歯科医師臨床研修を受けなければなりません。
また、臨床研修を受けている歯科医師(研修歯科医)は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならないと歯科医師法の「研修医の義務」として定められています。
ここでは、歯科医師臨床研修施設の概要を詳しく解説していきます。
歯科医師臨床研修施設とは?
歯科医師臨床研修施設とは、厚生労働大臣が臨床研修を実施するのに適当と認めた指定施設で、歯科医師臨床研修が受けられる施設を大きく分けると下記の2つに分類されます。
1.大学病院
2.厚生労働省指定の病院もしくは診療所
歯科医師臨床研修を行う施設は、全国で約350箇所あります。
【内訳】
[A]歯科大学
[B]医科大学
[C]医科病院・歯科病院
[D]歯科診療所
(例:カナザキ歯科/愛媛県)
臨床研修を行う施設は主に、次のように分類できます。
1)単独型臨床研修施設 [A][B][C]
2)管理型臨床研修施設 [A][B][D]
3)協力型(Ⅰ)臨床研修施設
4)協力型(Ⅱ)臨床研修施設
4)研修協力施設
各臨床研修施設の詳細
1)「単独型」臨床研修施設
単独または研修協力施設と共同して臨床研修を行います。
2)「管理型」臨床研修施設
協力型(Ⅰ)施設、研修協力型施設(Ⅱ)、研修協力施設と共同して臨床研修を行う施設で、その臨床研修を管理する施設のことです。
原則として、1年間の研修のうち、3ヶ月以上は管理型施設で研修することになります。
3)協力型(Ⅰ)臨床研修施設、協力型(Ⅱ)臨床研修施設
管理型臨床研修施設と共同して臨床研修を行う施設のことを言います。
協力型のみで臨床研修を行う事はできません。
協力型(Ⅰ)臨床研修施設、協力型(Ⅱ)臨床研修施設それぞれで研修する期間には規定があります。
4)「研修協力施設」
歯科診療を行わない施設で、管理型臨床研修施設と共同して臨床研修を行う施設(老人介護施設や保健福祉センターなどはここに含まれます)
<歯科医師臨床研修プログラムとは?>
歯科医師臨床研修プログラムとは、臨床研修の実施に関する計画を指します。臨床研修施設はそれぞれの特色ある独自の“プログラム”を作成し、厚生労働省の承認が下りた内容が登録されています。2024年3月現在で約460のプログラムがありますので、皆さんが申し込みをする際は、研修施設を選ぶだけでなく、研修プログラムも選択し、希望にマッチするものを選ばなければいけません。
<研修歯科医の募集を行う研修施設と探し方や注意事項>
歯科医師臨床研修希望者の募集は、単独型および管理型臨床研修施設によって行われます。各施設の研修プログラムは、厚生労働省が運営している歯科医師臨床研修プログラム検索サイト「D-REIS」で閲覧することが出来ます。
研修プログラムを1つだけ用意している施設もあれば、中には、1つの病院(診療所)が複数のプログラムを用意していることもあります。事前にしっかり見学して、自分が目指す歯科医師像に近づける研修が受けられるプログラムを選んでください。
歯科医師が臨床研修を受けないとどうなる?
診療に従事しようとする歯科医師は、一年以上、歯科医業を行う大学の附属病院、 又は厚生労働大臣の指定を受けた病院または診療所にて、歯科医師臨床研修を受けなければなりません。基礎研究者や行政職など、歯科診療に一切従事しない者は、臨床研修を受ける必要はありませんが、改めて歯科診療に従事しようとする際に臨床研修が必要です。
また、臨床研修中のアルバイトも禁止されています。そのため期間中は臨床研修に専念する必要があります。
歯科医師臨床研修の探し方
歯科医師臨床研修施設の中から研修先を選ぶわけですが、大きく分けると以下のようになります。
・母校の大学病院
・他の大学病院
・総合病院の口腔外科
・開業医の歯科医院
それぞれの詳細を解説していきます。
母校の大学病院
通っている大学の附属病院で研修を受けることもできます。これまで通い勉強してきた環境なので、精神的な負担もそれほど掛からないでしょう。また、同級生や先生などに相談しやすいというメリットもあります。
ただし症例数や種類が少ない傾向があるため、やや物足りなさを感じる可能性もあります。
他の大学病院
他の大学病院も臨床研修を実施しています。研修内容は共通しているものの「地元に戻って研修を受けたい」「人間関係を再構築したい」という理由で選ぶ人が多い傾向です。
総合病院の口腔外科
総合病院での研修は指導医とマンツーマンになる機会が多いため、経験を積みやすいといえます。同期と関わる機会があまりないため、大学病院での研修に比べ心身への負担は大きめですがその分、平均月給も高めの傾向です。
開業医の歯科医院
開業医の場合、歯科医院ごとにカリキュラムが異なります。また、症例数や種類が多いため臨床経験が多く詰めます。一般歯科での高頻度症例を沢山見ることができます。また、カリキュラムも高頻度治療を習得しやすい内容になっていることが多く、将来、一般臨床歯科を中心に仕事をしたいと考えている人には最も適しています。ただし、施設によってプログラムや指導方針が大きく違うため、実際に見学に行って十分確かめる必要があります。
自分に合った歯科医師臨床研修施設探しのポイント
歯科医師臨床研修施設を探す時は、下記のポイントを意識しましょう。
・どのような歯科医師になりたいか明確にする
・希望の研修施設を早めにピックアップする
・ネットだけでなく実際に話を聞いてリサーチする
・複数の施設を見学する
それぞれ詳しく解説していきます。
どのような歯科医師になりたいか明確にする
まずは、どのような歯科医師になりたいのかを明確にします。闇雲に、なんとなく施設を選んでしまうと研修中に後悔する恐れがあります。
歯科医師といっても、将来のキャリアプランはさまざまです。
・地域住民の歯の健康のために、予防歯科のスキルを高めたい
・より大きな病院の口腔外科医としてキャリアを積みたい
・いずれは開業して自分の理想を叶えたい
このような具体的な目標を決めたら、そこから逆算して研修内容や担当医、施設を選ぶようにしましょう。
希望の研修施設を早めにピックアップする
プログラムを有する歯科医師臨床研修施設は全国に約350あります(2024年3月現在)。希望にマッチする施設を探すのは時間がかかるので、早い段階から着手しましょう。
なお、臨床研修を最初に探す際は「D-REIS」を活用するのがおすすめ。D-REISは歯科医師臨床研修プログラム検索サイトで、施設の概要やプログラムの内容、審査状況などを確認できます。
ネットだけでなく実際に話を聞いてリサーチする
希望の研修施設をピックアップしたら、すでに働いている先輩や先生などから話を聞き、詳細をリサーチしましょう。
ネットだけでリサーチしていても、情報はなかなか集まりません。特に実際に働いている人の声は貴重で、施設を選ぶ際の参考にもなります。
複数の施設を見学する
実際に施設まで足を運び見学することも忘れてはいけません。実際に施設を見学することで中の雰囲気や職員同士のコミュニケーションの様子、設置されている設備などを把握できます。
まとめ
診療に従事しようとする歯科医師は歯科医師臨床研修を必ず受けなければいけないものです。より充実した研修を受けるためにも、早い時期から施設選びに着手しましょう。