歯学部を卒業した後は歯科医師臨床研修へと進みますが、この時期、誰もが悩むことがあります。大学院に進学し歯学博士の取得を目指すべきか就職して臨床技術の習得を目指すか?という2つの選択肢が大きく目の前に浮かび上がってきます。
この記事では、大学院博士課程と歯科医院就職との違いを詳しく解説します。進路に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。また、カナザキ歯科が主催するセミナー「絶対失敗しないセミナー」でもこのテーマについては詳しくお話しています。

歯学博士とは?
6年制の歯学部を卒業後、大学院に進学するという一つの選択肢。大学院の歯学部歯学研究科の課程を修了すると、「歯学博士」という学位を取得できます。
歯学博士の学位は、高度な専門知識を有するという証明でもあり、社会的信用にもつながりますので学位取得に魅力を感じる方も多いでしょう。また、博士を取得するには以下の条件を満たさなければいけません。
また、博士を取得するには以下の条件を満たさなければいけません。
- 大学院に4年以上在学
- 必要な単位をすべて取得
- 研究指導を受けたうえで論文を提出
- 審査および最終試験に合格
もし就職して4年働いていれば月収は60~100万円位でしょうか。年収で1,000万を超える人も珍しくはありません。お金を取るか?名誉を取るか?これはそう短絡的にとらえるべき問題ではありません。
就職や結婚など人生の大きな方向性を決めるとき、表面的な条件で物事を決めると、後で大変後悔する場合が多いのです。なぜなら条件は時とともに変化するからです。大切なことであればあるほど、もっと変わらない本質的なことまで掘り下げて考える必要があります。
博士課程で学ぶこととその後の進路
博士課程での研究分野は、基礎系と臨床系の大きく2つに分かれます。しかし、意外なことに臨床系の大学院に進んだとしても研究内容は基礎系になることが多いのが現状です。なぜなら臨床研究は論文としてアクセプトされにくいという事情があるからです。基礎系のほうが実験の条件を統一しやすく、はっきりと数値化しやすく、研究結果が出しやすいのです。
| 基礎研究分野 | 臨床系研究分野 |
|---|---|
| 口腔生理学、口腔生化学、歯科薬理学、口腔微生物学、口腔病理学、歯科生体材料学 | 保存修復学、歯科補綴学、口腔外科学、歯科矯正学、小児歯科学、口腔麻酔学 |
大学院に進んだらまず教授と話し合い、本人の興味と教室の方針を鑑みて何をテーマに研究するかを決めることになるでしょう。
そしてその分野の過去の学術論文を読み込み知識を整理し、過去の研究を参考に新たな実験の方法を考え研究を進めてゆきます。
ある程度結果が出たら学会に発表したり論文を書いたりしながら最終的に学位論文を仕上げてゆきます。この過程において科学的思考法、文献検索技術、読解力など研究者としての素養を身に付けることになります。そしてその学位論文が学内の診査に合格すれば学位取得ということになります。
学位取得の過程において教授をはじめ多くのメンターから多大な指導やサポートを受けることになります。
それらの教育やサポートをほぼ無償で受ける代わりに学位取得後は外来で患者を治療したり、講座の雑用や学生の教育、後輩の大学院生の指導などその教室に報恩の意味で数年残る。あるいは大学院での研究をさらに進めるために教室にのこるのが通例です。
この間、収入は決して多くはありませんが大学院でなくては得られないものもあります。その最たるものは科学的な思考法ではないでしょうか。
研究が好きな人、将来研究者になり最終的に教授を目指す人は大学院進学は必須といえるでしょう。
また将来臨床家を希望する人であっても、口腔外科、歯科麻酔、小児歯科、矯正、保存、補綴の専門医の資格を取る場合は大学に3年は残らないと資格が取れませんので大学院(2025現在の規定では開業医などの準研修施設で2年、大学では週3日以上常勤で3年間または大学だけなら5年間常勤で働きながら研修することが取得条件とされている)に残るのもよいでしょう。
ただ歯周病専門医については大学でないカナザキ歯科のような日本歯周病学会認定施設でも5年間常勤で研修すれば専門医取得可能です。
将来ある分野でスペシャリストになりたい、講演をしたり本を執筆したいなど明確な目標がある人にも、大学院のメリットはありますがその場合は社会人大学院生となって学位を取る方法もお勧めです。
歯科医院に就職するとどうなるか

歯科医院の場合は臨床がメインになります。多くの患者をさばくのが得意な医院、数は少なくて質を重視する医院、オールラウンドな治療ができる医院、専門分野重視の医院、教育をしっかり行う医院、見て憶えるタイプの医院、医院によってさまざまなタイプがありますので就職の際にはしっかりと調査をする必要があります。
ただ、学生の間はまだ本質を見る目ができてないのでどういうポイントを見れば自分にあった医院を見つけられるかの判断は非常に難しいのです。
ですから就職した後で後悔する人も多いのです。カナザキ歯科が主催する「絶対失敗しないセミナー」は誰でも自分に合った歯科医院を見つけられる歯科医院評価方法についても詳しく解説していますので一度参加してみてください。きっと何かの参考になると思います。
歯科医院に就職したらどうなるか、カナザキ歯科の場合について順を追って説明します。
カナザキ歯科はオールラウンド治療ですが、「for the patient自分が受けたい治療の実践」が理念ですので、そのために必要なスペシャリストになる教育も同時に進めており、非常に臨床と教育にこだわった医院です。また、歯周病専門医になれる施設でもあります。
1年目
研修医であることが多いですが、希望があれば既卒者でも基礎から教えています。
指導医がほぼ毎日教育の時間を取って保険治療の基礎を徹底的に教えますので、みんな必死で臨床の基礎を身に着ける1年間となります。1年かけて保険治療がほとんど完全にできるようになりますので1年の最後のほうは担当チェアを持つことになります。訪問診療も基礎的な歯周外科もマスターします。
2年目
2台のユニットを持ち、歯科衛生士2名、歯科医師1名の最小のチームリーダーとなり、リーダーシップも学びます。基本的な自費治療もできるようになります。専門医の指導のもと矯正や自費エンドにも取り組みます。
3年目
難しい自費治療も始めます。訪問や矯正も様々なケースを経験しどんどん自信をつけてゆきます。もう少し大きな規模のリーダー的役割も担うようになります。
4年目
難しい外科処置、矯正、補綴などさらに土台のしっかりした自身が身についてきます。
毎週フィードバック学習をしますので、この時期になると支台歯形成は一流の域に入ってきます。冷静に患者と対峙しバーの軸のコントロールが自在になるこの時期からインプラントのオペも始めます。
5年目
多くの症例を経験し咬合の知識と技術が確立してきます。
咬合を考慮した矯正や補綴がしっかりできるようになりますのでフルマウス治療にもそろそろ取り組みます。そうなることで患者様からの絶大な信頼を獲得できるようになります。
副院長や、分院長の候補にも名前が挙がるようになります。じっくり育て上げ実力をつけていますのでどこに行っても、また開業したとしても、ひときわ地域で目立った存在になります。
6年目
順調に進めばいよいよ歯周病専門医にチャレンジする時期です。カナザキの勤務医は約500項目の研修内容を段階的にこなし無理なく実力をつけることができます。またすべてのステップはメンターがチェックし合格して先に進みますので安心して実力を伸ばしてゆくことができるのです。
博士課程を取得する
メリット・デメリット
大学院に進学することで、いち早く最新の学術論文を読むことができます。
また、学生の講義や実習にも携われるので、とにかく特定の分野の知識を深めたいという方には最適な環境でしょう。
しかしその一方、大学院に在籍している4年間は働いて収入を得ることがあまりできません。
また、先に歯科医師として働いている同級生が技術を磨いているので、焦りや劣等感を覚える可能性もあります。そこで重要になるのが最後のまとめにも書いている内容になります。
人生の大切な選択を表面的な条件で判断してはいけないのです。大切なのは自分がどうなりたいのかを軸に人生を選択することです。
歯学博士と一般歯科医師の違い
歯学博士と歯科医師の違いをまとめた表がこちらです。
| 最終学歴 | 卒業する年齢 | 主な進路 | |
| 歯学博士 | 歯学博士 | 29歳 | 大学病院 |
| 一般歯科医師 | 歯学修士 | 24歳 | 歯科診療所 |
また、歯科医師として働きながら博士号を取得する方法もあります。
大学院の中には社会人枠を設けているところもあります。そこに通い条件を満たすことで、後からでも博士号を取得できます。
たとえば、東京歯科大学大学院の社会人枠を見てみましょう。
| 受験資格 | 開業医、大学、研究所の勤務医・教員・研究者等として原則2年以上の経験を有し、入学後もその身分を有する者で、以下の資格を満たしている者。 1) 歯科大学または大学歯学部を卒業した者。 2) 1)と同等以上の学力があると認められた者。 |
| 試験科目 | 1) 外国語 (英語:辞書(電子辞書可、但しその他の機能があるものを除く)の持込み可) 2)口頭試問(面接) 3)専攻主科目及び面接 |
| 目的及び使命 | 本大学院は、歯学及び歯学に関連する学問の領域において、理論応用を教授かつ研究し、人類福祉の増進、 延いては文化の進展に寄与するとともに、国際的な視野、優れた研究能力、豊かな学識を有する研究指導者および歯科医学研究に精通した高度な専門職業人を養成することを目的・使命とする。 |
大学院ごとに要項が異なる可能性もあるので、詳しくは各大学院のホームページなどをご確認ください。
カナザキ歯科が考える大学院と開業医の違い
カナザキ歯科主催のオンラインセミナー「絶対失敗しない国試対策&研修施設」の内容を是非見てください。
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まとめ
大学院に進むか、開業医に進むかは歯科医師人生の大きなターニングポイントです。
しかし初めに述べたように表面的な条件の良し悪しで決めるのは一生レベルで考えると本当の意味の得策ではありません。
大切なことは、自分の一番大切な価値観は何か、そして自分はどうなりたいのか?これをはっきりさせることです。(その方法についてはセミナーで説明します)
それができれば、そうなるためには何を選べばよいかがはっきりと見えてくるのです。何度も言います。「条件で選ぶな、自分がどうなりたいかで選べ!」
大学院に進むか、開業医に進むか、正しい答えはあなたの中にすでにあるはずです。
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